:NO.117『最底辺の10億人』

hiroki-u2008-10-26

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最底辺の10億人 最も貧しい国々のために本当になすべきことは何か? (単行本)
ポール・コリアー (著), 中谷 和男 (翻訳)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822246744/cg0853-22/ref=nosim/
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[ 8点 ] ※10点満点中

地球上の人類を、先進国10億人、開発途上国40億人、最底辺10億人の3つに分類して、その最も貧しい人々、主にアフリカに対して何をすべきかを述べた本。
そんな貧しい最底辺の国々は、紛争の罠、天然資源の罠、内陸国であることの罠、小国における悪いガバナンス(統治)の罠のどれかに嵌っている。

特に興味深かったのは、天然資源の罠。天然資源があれば歳入の心配はなく、いわゆるアラブ国々の如く、莫大な資源レント(資源収入ーコスト)によって働かずとも国として成り立つかのように思っていたが、そこまで豊かでない資源を持つ国は、逆にガバナンスの面で問題があるという点が興味深い。そういう国は、税金を徴収する必要が少ないため、権力側には歳入歳出に関して国民に対して説明責任を負う動機がなく、また国民側もチェック機能も働かないため、民主主義を機能不全へと陥れるというもの。ナイジェリアのように一時の石油ブームに沸いたものの、石油価格下落によって、一時の半分にまで生活水準を落とさざるを得なくなってしまえば、国は大混乱になる事必至。でも、そうなった時には、国は石油で儲けたお金をばらまいてしまっていて、あとに残ったのは腐敗した政治だけというのは、あまりに悲しすぎる実話・・・。

そんな最底辺の国に対して、軍事介入と貿易政策、国際的基準についての調整が必要だと説く本書は、間違いなく良書。もう一度じっくり読んでみたい。

また、アメリカのイラク戦争についても、この本を読んだら、ちょっと違う視点で考えられるかもしれません。

最底辺の10億人

最底辺の10億人