:NO.62『シリコンバレーから将棋を観る』

hiroki-u2009-05-25

***********************************************************************
シリコンバレーから将棋を観る -羽生善治と現代 (単行本)
梅田望夫 (著)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4120040283/cg0853-22/ref=nosim/
***********************************************************************

[ 9点 ] ※10点満点中

『6四角』って言われても盤面のどこなのか頭に出てこない。『矢倉』と言われても戦法ってのは分かるけど、具体的に何のことかさっぱり分からない。それほど自分自身、全く将棋を知らないが面白かった。1つは2008年の将棋界が物語として面白かったという点で、もう1つは将棋界が現代社会の先取りをしているという点で。

将棋の世界は、いくら新手を創造しても、それを特許や著作権で守ることなどできない。しかも誰かがどこかで一度指した手は、瞬時に伝達されて研究される。しかし、そんな「情報革命」が進行するこの厳しくて大変な時代も、皆で一緒に進化・成長できる良い時代と考えることができる、こういう時代を生きているからこそ将棋の真理の解明も早く進むのだ、そう羽生は認識しているのである。
先に述べた「高速道路論」においても、将棋の世界の「学習の高速道路」が、社会全体の他の領域における「学習の高速道路」よりもどんどん整備されているという意味で、将棋界が「社会全体でいずれ起きるを先取りした実験」をしている、と見ることができる。

そして、羽生さんはGoogleのやろうとしている「世界中の情報を整理しつくす」のと同じことを自らの頭の中で実験しているんだと。いわゆる「量が質に転化する」というのは世の中の真理だと思うが、実践するには気の遠くなるような時間と努力を要する、そんなことを1人の頭の中でやろうとしているとは・・・。恐れ入ります。

もう1つ気になったのは、現代将棋の要諦について。

現代将棋の要諦は「あとまわしにできる手は、できるだけあとにまわす」ことであると言う。

これってあらゆる段取りに共通する考え方だなぁと思う。考えに考えを重ねて順位付けをして段取る。やるべきことにプライオリティを付けるってことか。勉強になります。

著者は将棋を指さなくても、将棋が強くなくても、将棋を「見て楽しむ」ファンがいてもいいじゃないかと提案する。そういう意味では、この本は「見て楽しむ」ファンでもない私が読んでも楽しめる本だったと言えました。
[rakuten:book:13155399:detail]