:NO.94『ドイツ参謀本部』

hiroki-u2009-08-23

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ドイツ参謀本部-その栄光と終焉 (祥伝社新書168) (新書)
渡部 昇一 (著)
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[ 9点 ] ※10点満点中

たまたま本屋で目に止まったので、読んでみました。

で、田母神俊雄氏推薦!はまぁどうでもいいとして、ホント面白かった。初版が1974年とかなり月日が経っていますが、新鮮に読めた。

内容はと言うと、近代ヨーロッパを戦争の形態によって4つの区分して、ドイツ参謀本部を中心として、戦争の在り方を論じている。

ヨーロッパ陸戦史、四つの時代区分
 第一期 三十年戦争後の絶対王権の時代
 第二期 フランス革命とナポレオンの時代
 第三期 ドイツ参謀本部の時代
 第四期 第二次世界大戦の時代

ヨーロッパの歴史ってほとんど学生時代に習ってないし(世界史で習ったかもしれないけど覚えてないし)、いろいろ新鮮だった。例えば、ナポレオンの敗戦の影には、大きくドイツ参謀本部の知恵があり、ナポレオン最後の戦いでもある"ワーテルローの戦い"でもその強さがいかんなく発揮されている。何より面白いのは、ナポレオンは局地戦ではその戦いのほとんどにおいて勝利を収めているにも関わらず、結果としてフランスが戦争に負けたという点。しかも、著者曰く、ナポレオンは最期まで、なぜ負けたかの理由も理解していなかっただろうというのが面白い。ドイツ参謀本部という組織力によって生み出された戦略のスゴさというべきか。

じゃあ、ドイツ参謀本部のスゴさって何?っていうと、参謀本部の『組織としての継続性』に行き着く。これまで歴史上の参謀本部というものは存在せず、戦争がある度に臨時的に戦争プランを戦略立案する部署が立ち上がっていた。それを継続的な組織としたってこと。そして、継続的な組織になったために2つのメリットがあった。ひとつは日常的にあらゆる戦争の可能性を考慮し、日々戦略を考え続けることが出来るようになったこと。もうひとつは、陸軍将校の参謀本部としての教育制度を確立することが出来たため、優秀な人材が育ったこと。戦争論で有名なクラウゼヴィッツもここから育ってきた。

そんな最強のドイツ軍にもヒトラーの悲劇が。ここからの教訓としては、何よりもリーダー(政治)とスタッフ(軍、参謀本部)のバランスが非常に大事であるということ。一時代前のリーダー(ビスマルク)とスタッフ(モルトケ)の生み出すバランスの圧倒的な美しさの後だけに、そのアンバランスさが際だっている。ま、これは軍、戦争だけに限ったことではなく、今日の社会、企業全般に渡って普遍的な真理なんだろうなぁ〜と。

面白かった。

ドイツ参謀本部-その栄光と終焉 (祥伝社新書168)

ドイツ参謀本部-その栄光と終焉 (祥伝社新書168)