:NO.144『日本「半導体」敗戦』
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日本「半導体」敗戦 (光文社ペーパーバックス) (単行本(ソフトカバー))
湯之上 隆 (著)
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[ 8点 ] ※10点満点中
良書。中の人がキチンと書いてるので、途中、素人にはかなりマニアックな半導体の製造プロセスの説明があったりするが、分かりやすい。
まとめとしては、あまりの日本半導体メーカーの経営者の無能っぷりに驚愕に尽きる。副題にもあるとおり「イノベーションのジレンマ」が本書のキーワードだが、経営者が"イノベーション"のなんたるかを知らないとここまで杜撰な経営ができるのかと・・・。"イノベーション"を単なる"技術革新"と捉えて過剰技術・過剰品質を突き進めて、あげく、韓国に負けると「技術では負けていなかった。」とトンチンカンな回答をする。
技術=コストなのである。どのような技術を選択したかによってコストは自ずと決まってしまうからである。
インテルの技術者の話を例に出してもこうも言う。
「目標の原価を実現することが、最も悩ましい」「コスト度外視で、すべての技術を無制限に使ってよいのならこんな苦労はしない」とのことである。つまり、インテルは、低コストで歩留まりを上げやすい工程フロー、すなわち、「儲かる工程フロー」を構築しているのである。
ていうか、コスト度外視で良いものを作れば、その商品が売れて会社も儲かるって、本気で思ってたんだろうか。ネタにしか思えない・・・。
また、本書では日本半導体メーカーの「自ら陥った4つのジレンマ」として、
◇コンソーシアムのジレンマ
◇合弁会社のジレンマ
◇日本の組織のジレンマ
◇日本メーカーの特許のジレンマ
を挙げているが、3つめの日本の組織のジレンマは他人事だと思えなくて恐ろしい。ピーターの法則的に言うと、昇進によって、スーパーエンジニアが、スーパー無能マネージャーに。功績を称えるために昇格させることがいかに企業の首を絞めていることか。あぁ。
[ピーターの法則]
1)階層社会では、
・すべての人は(現在の地位において有能ならば)昇進する。
・(いずれは)その人の無能レベルに到達する。
・職務を遂行する能力がなくなると、それ以上は昇進しない。
2)組織に「十分な地位」と「十分な時間」がある場合、
・すべての人は、その人の「無能レベル」まで昇進し、そこに留まり続ける。
・やがて、あらゆる地位は、職責を果たせない無能な人間で占められる。
・その結果、仕事は、まだ無能なレベルに達していない人が行う。
3)昇進は「無能への道」への一里塚。
・スーパーエンジニアが、スーパー無能マネージャーに!
・組織の上層部は死屍累々。
・無能レベルに達する人の人数は、組織に存在する「地位」の数に比例する。
・十分な時間と十分な地位がある組織は、「無能の組織」を化す。
そして、最後はスーパー無能経営者のいっちょあがりってことですか、そうですか。
(これをどうにかするには大きく2点考えられる。一つは、極力フラットな組織にすること。もう一つは、昇進(昇格)と昇給を切り離すこと。googleなんかはまさにこれを実践しているが、日本企業に果たしてできるだろうか。)
- 作者: 湯之上隆
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2009/08/20
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